坊主

やはり私は坊主だった。ただ、それが3日でなかった点については褒めてほしい。

 

最後に書いたブログから3ヶ月以上経った。歳をとると時間が経つのを早く感じるというのはうなづけることで、例えば今日は9月20日であるが、9月になってもう20日経ったのかと驚く自分がいる。このように1ヶ月ごとで見ていくと確かに早く感じるのだが、3ヶ月や半年といった長いスパンで見るとどうだろう。案外妥当なのかなと思ってしまうのは私だけだろうか。

さて、ブログをサボっていたこの3ヶ月間で様々な出来事があった。しかし、日頃から日記をつけておらず、記憶力も鈍ってきた私が思い浮かべたのは比較的記憶に新しい岡山での免許合宿のことである。

 

現在大学4年生である私は、つい1週間前まで免許を持っていなかった。大抵の大学生は1年生、遅くとも2年生までには長期休暇などを利用して免許を取りに行くものである(少なくとも私の周りの人はそうであった) のだが、いつか取ればいいやと先延ばしにしていたら気づけば4年生になっていた。このままいけば無免許のまま社会人になってしまうと焦った私はようやく「車校 合宿」と検索をかけはじめた。そうして見つけ出したのは岡山県倉敷市にある自動車学校であった。わたしの中で車校を決める基準として、①合宿プランを設けているところ ②できるだけ地元から離れた県にあること というのがあり、まさにそこはうってつけの場所であった。

他の車校がどうかは分からないが、そこは家から車校までの新幹線代を負担してくれるとのことだった。特に領収書は必要ないという。そこで、当時金欠を極めていた私はひらめいてしまった。

「夜行バスで行けば、儲かるんじゃね」

それに気づいたのが出発の前日というところで、私のなんでもギリギリにやってしまう癖が出てしまっているのだが、ひらめいてしまった以上は行動に移さずにはいられず、すぐに夜行バスの予約にとりかかった。

翌日、無事に夜行バスに乗ることができ一安心した私だが、何を思ったのか2週間分の荷物が入った大きなキャリーケースを車内に持ち込んでしまった。ただでさえ狭いのに、だ。キャリーケースは天井の荷物置き場に入るわけなどなく、自分の足置き場を犠牲にするしかなかった。足を満足に伸ばすことができず、縮こまるようにして寝た私がうまく寝付けなかったことは言うまでもない。 

 

そんなわけで気持ちの良くない朝を迎えてしまったが、バスを降りた途端目に入った倉敷駅という文字が嬉しくてさっきまでの疲れが嘘のように、1人で岡山に来れたという達成感に満ちていた。

そのあと、電車を乗り継ぎ集合場所である駅に着くと私と目的を同じくする同志たちが数名いた。男子大学生2人組に、女子大学生1人(仮にA子)に、40代くらいの女性が1人だった。男子大学生たちは友達同士でここに来た様子で、私も友達と来たかったなあと少し羨ましく思ったが、のちに1人で来て良かったと思える事件が起こる。それについてはまた後で話すことにしよう。

女子大生A子は、私と同じく1人で合宿に臨んだ様子で(つまりぼっち)、明るめの茶髪ロングにおヘソが見えるくらいの短めの丈の黒Tに黒スキニー、肩からはサンローランのショルダーがかかっており、キャリーケースはショッキングピンクだった。後ろ姿のみの情報だったが、正直なところちょっとチャラそうだなあなんて思ってしまったが、どんな顔をしてるのかしらと気になった私は、横に立って顔をチラ見してみることにした。

...声もかけずにいきなり横に立ち、人様の顔を覗くなんて我ながら気持ちの悪いことをしたが、私はコミュ症のくせして他人のことが気になって仕方ないタイプなのだ。

どんな美人なのかしらと想像を膨らませながら覗いた彼女の顔はなんと、、、とても美人だった。なんだよ想像通りかよ!と何故か残念がる自分がいたが、とにかく彼女は美人だった。

あれ....?でも待てよ...何かがおかしい。

彼女の顔に少し違和感を覚えた。何かこう...完璧すぎる気がしてしまった。

この際、一度覗くも二度覗くも同じだろ!思った私はその違和感の理由を明らかにするべく、二度目のチラ見を犯した。そこで確信した。

 

彼女は整形していたのである。ちなみに先に言っておくが、私は整形否定派ではない。本人が決めたことなのだからそれについてどうこう言うつもりはない。個人の自由だからである。ただし自分が整形をするか否かと言われたら間違いなく後者であるが。

話を戻すが、彼女は整形をしていた。もちろん、本人に確認したわけではないが誰がどう見ても整形だった。しかも一箇所ではない。少なくとも目、鼻、口、アゴの四箇所は施しているようだった。

 

当時それを目にした時の私はというと.....シンプルに感動していた。整形って本当にこの世に存在するんだなぁと思った。これまでネットやテレビで何度か目にしたことはあったが、実際に目にする日が来るとは思ってもみなかった。

と思ったのも束の間、その数秒後には失礼承知で言うが、整い過ぎた不自然な顔に恐怖を感じていた。

実際、合宿が始まってからも何度もタイミングはあったはずなのに怖くて彼女に話しかけることができなかった。というよりもなんて話しかけたらいいのか分からなかった。整形したの?と軽々しく問うわけにはいかないし、かと言って整形について言及せずに他の話題を振ったらそれはそれで私が彼女に気を遣っているのを感づかれてしまうのではないかと考えると話しかけることはできなかった。

4日目くらいに初めて彼女から話しかけてくれたことがきっかけで、それからは多くはないが度々言葉を交わすことがあった。それを通して、ぼんやりではあるが彼女のことがなんとなく分かってきた。彼女はごく普通の大学生だった。整形しているからといって、無根拠に怖いと思って近付けないでいた自分が情けなくなった。

しかし結局、合宿中彼女と言葉を交わしたのは数回だけだった。もし彼女が整形していなければ、、、なんて思っても今となってはもう遅い。私の狭い心が引き起こした少し苦い思い出となってしまった。

 

だがこの合宿は楽しいことの方が圧倒的に多く、学生最後の夏休みをとても彩りあるものにしてくれたのは間違いない。その楽しい話たちについてはまた話そうと思う。 

 

終わり